錦光山宗兵衛 金彩桜花文大花瓶 京薩摩 京焼 粟田焼　薩摩焼

七代錦光山宗兵衛の大花瓶を出品致します。
本作は高さ56㎝の大花瓶ながら、大作にありがちな雑な絵付けではなく、いかにも京薩摩らしい精細緻密な絵付けを器体全面にびっしりと施しています。一方で、ごてごてとした装飾にはなっていません。その理由としては、モチーフを桜花だけに絞りこみ、華麗な金彩有職文を器体の上部・中部・下部の三か所へ帯状に配するというすっきりした品位のある構成をとっているためです。花鳥、あるいは着物姿の女性、あるいは武者姿などが当時の輸出向け陶磁器の典型的な意匠でしたが、ややもすると乱雑な印象を与えるものもありました。本作はそれらの一般輸出品とは一線を画す作品であることが一目瞭然です。

錦光山に就いては、今さら贅言を費やす必要もないとは思いますが、改めて簡単に紹介させて頂きます。

粟田焼の窯元、錦光山宗兵衛家は代々将軍家御用御茶碗師の地位を守っていましたが、明治維新により、顧客や後ろ盾を失いました。この動乱期に家督を継いだ六代錦光山宗兵衛は、これまでの粟田焼に薩摩焼の金襴手の手法を取り入れ、精細巧緻を極めた京薩摩というジャンルを確立しました。おりしも欧米を席捲したジャポニスムの流行に乗り、京薩摩は一世を風靡しました。しかし、七代が家督を継いだ時は、ジャポニスムも終焉を迎え、美術の潮流は世紀末のアールヌーボーへと変わる頃でした。危機感を抱いた七代は、京都市陶磁器商工組合の組合長として京都市陶磁器試験所を設立し、製造・材料・意匠等の改良に力を注ぎました。

さて、本作は、七代錦光山宗兵衛がそうした転形期（明治中期～後期）に作成した作品です。有職文は通常、花瓶の口縁部や首部・脚部などの目立たないところに副飾文様として描かれますが、本作では胴部の一番目立つ部分に大きく帯状に有職文が描かれています。むしろそれが主題となる桜花文を引き締めています。同一画面内に具象と抽象のバランスを絶妙に保持した傑作と言ってよいでしょう。

保存状態は写真でご覧いただける通り極めて良好です。ワレ、カケ、ヒビなどの瑕疵は全くありません。伝世品にありがちな口縁部の金彩の擦れも全くありません。

尚、私の説明文と写真をそっくりそのまま盗用して、格安で同じ品物を販売しますという詐欺サイトが最近いくつかあるようです。私はオークションサイト以外に出品しておりません。騙されないよう、ご注意下さい。

商品の情報